スポーツ内科
スポーツ内科とは、スポーツによって引き起こされる内科的な問題に対する予防や治療を行う医学分野です。当院では、成長期のアスリートのパフォーマンス低下につながる貧血や運動で誘発される気管支喘息、高強度運動によって生ずるアスリートハート(スポーツ心臓)、運動中の突然死の予防にかかわるスポーツ内科外来を行っています。
スポーツに励む際、運動負荷が過剰であったり、栄養不足や休息不足だったりすると、スポーツをきっかけに体調不良が引き起こされる場合があります。
またスポーツに励む中で、「最近、体力がなくなってきた」「パフォーマンスが低下してきた」と感じたことのある方は多いのではないでしょうか。単なる疲れや練習不足と思っていたら、何らかの病気によってパフォーマンスの低下が起こっていることもあります。
当院では、問診や身体検査、専門的な検査(血液検査や各種心臓検査など)を通じて、アスリートのスポーツ内科的な問題を診断し、適切な治療を提供していきます。
アスリートやマスターズの方はもちろん、中高生の部活動の選手まで、年齢層や競技種目に隔たりはなく、スポーツされる方ならどなたでも受診できます。
スポーツ内科受診のきっかけとなる症状
- 動悸(ドキドキする)や息切れ
- 身体がだるくて疲れやすい
- 休んでも疲れがとれない
- 立ちくらみ、貧血が起こりやすい
- 筋肉がつりやすく、力が入らない
- 運動時に胸痛や腹痛が起こる
- 無月経、月経不順に悩まされている
- 思うように記録が伸びない
- パフォーマンスが低下していると感じる
- 以前できていたことができなくなった
スポーツ内科では、このような様々な状態が受診のきっかけとなります。明らかな症状がある方もいらっしゃいますが、中には疲れやすさやパフォーマンスの低下など、目立たない症状もあります。
アスリートは高い心肺機能や身体能力を持っているため、スポーツ内科的な問題が存在してもそれを見過ごしてしまう可能性があります。まずはお気軽に当院へご相談ください。
スポーツ内科でみられる問題
鉄欠乏性貧血
スポーツ内科において最も頻繁に見られる貧血です。この状態では、酸素不足が起こり、息切れやパフォーマンスの低下などの症状が現れます。原因としては、長期的な強い運動による栄養素不足や鉄消失が挙げられています。血液検査の結果を元に診断し、適切な治療としては、食事療法や鉄剤の内服が行われます。早めの発見と対策が必要です。
運動誘発性喘息
運動時に息切れや咳、喘鳴などの喘息症状が引き起こされる病気です。寒冷・乾燥気候で行われる競技や、肺の換気量が多い競技で起こりやすいです。
運動前後での呼吸機能の変化を測定して検討します。治療としては、運動開始前の気管支拡張薬の予防的吸入が効果的です。
アスリート無月経
アスリートの無月経が3か月以上続く状態を指します。アスリート無月経の主な原因はエネルギー不足であり、有効エネルギー不足+無月経+骨粗鬆症は女性アスリートの3主徴とも呼ばれています。
放置すると骨ももろくなり、疲労骨折のリスクが高まるため注意が必要です。治療としては食事療法が基本となりますが、状態に応じて専門診療科に紹介していきます。
オーバートレーニング症候群
長期間にわたる過剰なトレーニングによって、運動中のパフォーマンスが低下し、日常生活でも疲労が続く病態です。重症例では、神経系や内分泌系、免疫系などの機能異常が見られる場合もあります。オーバートレーニング症候群は、まずは完全な休息が必要です。その後、段階的に運動量
アスリートハート(スポーツ心臓)
激しい運動を長期にわたり続けると,心臓の機能や構造に変化が起こる場合があります。これらの変化をアスリートハート(スポーツ心臓)と呼びます。自覚症状はなくても,徴候として徐脈や心電図異常、心拡大が認められたりします。臨床的所見や心臓超音波検査など各種検査によって診断されます。スポーツ心臓は重篤な心疾患との鑑別が重要となります。
運動中の突然死
突然死は事故などの外的な要因がなく、予期できなかった内因性の病気で発症し、24時間以内に死亡するものとされています。健康と思っていても運動の最中に発生することがあります。運動中に突然意識がなくなり転倒して発見されます。初期の心電図検査では電気的除細動の適応があることが多いことが知られており、潜在していた心疾患の急性発症が想定されています。国内の調査では発症年齢は51歳が中央値で、原因としては急性心筋梗塞、肥大型心筋症、心筋炎などが発見されています。また球技やコンタクトスポーツでは胸部に打撃受けることで心臓振盪で心停止が発生することも知られています。
心臓血管疾患はぎりぎりまで症状が現れないことが多く、症状がなくても定期的な心臓血管に関してのスクリーニングが望まれます。
当院では競技参加前の医学的評価や心臓健診にて、運動中の突然死の予防につながるように取り組んでいます。